珈琲はお好き?

世界中で最も多く消費されている飲みものの一つであると同時に、健康への良し悪しが常に議論の的となっている、コーヒー。その消費量は、水、紅茶に次いで、第3位に位置し、私たちの主なカフェイン摂取源でもあります。焙煎されたコーヒー豆は、ポリフェノールの一種として知られるフラボノイドなど、1,000以上の生理活性物質で構成され、これらによる、抗酸化作用、抗炎症作用、抗繊維化、抗がん作用などの効果に関心が寄せられています。(1)

各種の調査結果を総合すると、コーヒーには抗酸化物質などによるプラス面の方が大きく、特に肝機能への効果が目立ちます。具体的には、慢性の肝臓病や肝臓がん、また現在増加傾向にある、脂肪肝などに有効だということ(1)。加えて、循環器系のリスク低下、胆石予防、神経細胞保護効果によるアルツハイマー病やパーキンソン病のリスク低下、免疫システムの健康に欠かせない腸内善玉菌の繁殖を助けるなど、各種の予防的効果も報告されています(1,2,3)。マイナス面では、カフェインによる妊婦や胎児への影響を中心に、肺がんや咽頭がん、リウマチなどにはコーヒーを避けた方が良いという結果にまとまっています(1)。また、カフェインは更年期を迎えた女性の骨密度低下に加速をかけると理解されている一方、コーヒーに含まれる植物エストロゲン効果が有効かもしれないという見解もあるため(4)、コーヒーと骨の健康に関しては、さらなる研究の余地が見られます。

数年前に、「1日に8杯以上の飲用も含めて、コーヒーは全死因死亡率と相反する関係(=死亡率の低下に有効)」という調査結果(5)が発表され、驚いたことがあります。現実的に1日8杯前後のコーヒーを飲んで健康を維持できるのか、また、コーヒー8杯分のカフェイン摂取量に問題がないかという点に疑問を感じました。これは、多くの研究に共通することですが、結果を見て一概に「健康にプラス」とは受け止められないものの一例だといえます。ちなみに、この「1日8杯以上」というのは実のところ効果が記録された最大摂取量のことで、最も高い効果が見られたのは1日3杯程度(1)。カフェイン摂取量の上限は国ごとに異なり、主には1日200g〜300mg、または、300mg〜400mgと設定されているようです(6)。コーヒーは同じ一杯でも、抽出法や豆の違いで、カフェイン含有量が60mg以下から300mg以上(7)と大きな幅を生じます。そのため、コーヒー飲用が1日一杯以上の場合には、これらの違いがカフェインの総摂取量を大きく左右することになります。

カフェインは、ストレス・ホルモンの分泌を促して交感神経を刺激し、からだを緊張した状態にします。これが、カフェインによる覚醒作用として知られているわけですが、交感神経優位の状態は基本的に自律神経のバランスを崩す原因となるため、長期継続には向きません。

朝のコーヒーで疲労気味なからだを目覚めさせ、午後はコーヒーのカフェイン力でその日を乗り切る、というようなパターンに陥っていませんか? 肝臓で行われるカフェインの代謝は(先天的または後天的な理由で)人により速さが異なるため、カフェインによる影響の出かたや中和されるまでの時間にも個人差があります。個人に合う適量の範囲内で、(覚醒目的ではなく)フラボノイドによる苦味をゆっくりと味わい、コーヒーのある空間丸ごとを楽しむのが一番といえるのではないでしょうか。

by ナチュロパシー・ジャパン/ゆり子

 

参照:

  1. Poole R, et al. (2017). ‘Coffee consumption and health: umbrella review of meta-analyses of multiple health outcomes’, The BMJ, 359(j5024). doi: 10.1136/bmj.j5024
  2. Ding M, et al. (2014). ‘Long-Term Coffee Consumption and Risk of Cardiovascular Disease: A systematic Review and a Dose-Response Meta-Analysis of Prospective Cohort Studies’, Circulation, 129(6):643-659. doi: 10.1161/CIRCULATIONAHA.113.005925
  3. Gonzalez S, et al. (2020). ‘Long-Term Coffee Consumption is Associated with Fecal Microbial Composition in Humans’, Nutrients, 12(1287). doi:10.3390/nu12051287
  4. Kiyama, R. (2019). ‘Estrogenic Activity of Coffee Constituents’, Nutrients, 11(1401). doi:10.3390/nu11061401
  5. Loftfield E, et al. (2018). ‘Association of Coffee Drinking With Mortality by Genetic Variation in Caffeine Metabolism Findings From the UK Biobank’, JAMA Intern Med, 178(8):1086-1097. doi:10.1001/jamainternmed.2018.2425
  6. Reyes C, and Cornelis M. (2018). ‘Caffeine in the Diet: Country-Level Consumption and Guidelines’, Nutrients, 10(1772). doi:10.3390/nu10111772
  7. Gloess A, et al. (2013). ‘Comparison of nine common coffee extraction methods: instrumental and sensory analysis’, European Food Research and Technology, 236:607-627. doi:10.1007/s00217-013-1917-x