褐色のマジック

世界中で愛されているチョコレート。その歴史を辿ると、古代メキシコで、マヤ、インカ、アズテックと呼ばれる民族がカカオを栽培し、その豆を発酵させて飲み物にしていたことに遡るようです(1)。この「カカオ・ドリンク」は薬として使われ、女性やこどもには不向きとされていたことや、媚薬または強壮剤として扱われていた話など、各種の興味深い逸話が記録されているようです(2)。

カカオ豆には、チョコレートの苦味を構成する、カテキンなどのフラボノイド(抗酸化物質)が豊富です(3)。発酵→乾燥→焙煎→摩砕→圧搾→混合→精錬→調温→冷却形成、という工程を経て作られるチョコレート。その魅力には、味や風味はもちろん、「ハッピー・ホルモン」として知られるセロトニン値を上げ(1)、ストレス低下に貢献することも挙げられるでしょう。しかし実際に、チョコレートが食べたいという欲求や衝動にかられる人たちを対象に行った調査では、ダーク系よりもミルク・チョコレートを選ぶ人が圧倒的に多く、欲求や衝動はカカオそのものというより、砂糖など他の原材料が関係するという結論に至っています(4)。砂糖も一時的にセロトニン値を上げますが、ホルモンや代謝のバランスを操作する血糖値の不安定を促すため、効果的な気分の抑揚は得られません。ミルク・チョコレートの場合、 総量の3分の1から約半分が砂糖なので、チョコレート中のフラボノイド含有率は低く、虫歯の心配に加えて血糖値の不安定や腸内環境の乱れを促すなど、注意点が増えます。

人々にしあわせな時間を与えるチョコレートには、複雑な側面もあります。オーガニックや伝統的なカカオ栽培法以外には、大量の農薬が使用されること。これに伴い、集中的な農薬散布でエネルギーが大量消費されるため、オゾン層の破壊にも貢献します(5)。また、カカオの汚染は農薬にとどまらず、発酵時のカビ感染が原因で、チョコレートからカビ毒が検出されることも珍しくないようです(6)。農薬は、植物が自然に持ち備える自己防御機能をブロックします。その影響でカカオが弱く育つため、カビ感染しやすくなっているのかもしれません。現在、この農薬集中型栽培が主流ですが、その理由は利益率の高さにあるようです。しかし、環境にフレンドリーなオーガニック栽培と比較した場合、生産性や利益率に大きな違いはないため(5)、今後オーガニック栽培が増えることも期待できそうです。

チョコレートは、ダークなほどフラボノイド含有率が高くなるので、機能性食品として楽しむなら、カカオ含有率85%かそれ以上の低糖チョコレートをお勧めします。最近では、糖尿病の人にも安全で、チョコレートをゆっくり楽しむひとときにも最適な、カカオ100%(無糖)の商品も見かけるようになっています。見つけた際にはぜひお試しを。

by ナチュロパシー・ジャパン/ゆり子

 

参照:

  1. Latif, R. (2013). ‘Chocolate/cocoa and human heath: a review’, The Netherlands Journal of Medicine, 71(2):63-68.
  2. Lippi, D. (2013). ‘Chocolate in History: Food. Medicine, Medi-Food’, Nutrients, 2013(5):1573-1584. doi:10.3390/nu5051573
  3. Barišic ́ V, et al. (2019). ‘The Chemistry behind Chocolate Production’, Molecules, 24(3613). doi:10.3390/molecules24173163
  4. Katz D, Doughty K, and Ali A. (2011). ‘Cocoa and Chocolate in Human Health and Disease’, Antioxidants & Redox Signaling, 15(10):2779-2881. doi:10.1089/ars.2010.3697
  5. Neira, D. (2016). ‘Energy efficiency of cacao agroforestry under traditional and organic management’, Agronomy for Sustainable Development, 36(49). doi:10.1007/s13593-016-0386-6
  6. Copetti M, at al. (2013). ‘Occurrence of ochratoxin A in cocoa by-products and determination of its reduction during chocolate manufacture’, Food Chemistry, 136:100-104. doi:10.1016/j.foodchem.2012.07.093