冬の養生

東洋医学でいう陽のエネルギーに満ちた夏とは対象的に、冬は陰のエネルギーが司る季節。根野菜などが旬となり、体内の熱を保つために鍋などの温まる煮込みものが、冬の味覚として登場します。からだを冷やすサラダ野菜などは、もちろん冬の自然環境下には育ちません。季節外れのものに加えて、真冬に、例えばバナナなど熱帯の食べ物を食べているなら、体内に入るバナナの情報が実際の季節とマッチしないという現象を起こします。動植物同様、人間にも環境のインプットによる調整機能が備わっているため、旬のものを食べて体内にその環境情報を送ると、シンクロ機能が働いて熱や脂肪の代謝率などが調整されるようです(1)。これは、2005年に日本の研究者たちによって紹介された「クロノニュートリション(時間栄養学)」と呼ばれる領域に関連します。クロノニュートリションとは、体内時計を司る遺伝子と、食事内容や時間帯との関係に基づく栄養学のことで(1,2)、栄養素が摂取の時間帯に関わらず体内で同様に働くというアイデアの枠から出て、従来の栄養学にはない領域に踏み込んでいます(2,3)。現在では、このクロノニュートリションに関する研究が、日本にとどまらず世界中で行われています。

食べ物と体内時計に関連する分野では、体内でエネルギー源となる栄養素はもちろん、栄養素には属さない非栄養素(ポリフェノールなど)にも関心が寄せられています。例えば、ブロッコリやキャベツに含まれる非栄養素のスルフォラファンは、抗がん作用で知られるパワフルな物質(4)であると同時に、体内ではビタミンD受容体の機能を司る遺伝子にも働きかけて、ビタミンDの機能を助けます(4,5)。適度のビタミンDは免疫機能に欠かせませんが、冬は日光浴によるビタミンD合成が困難な時期。ブロッコリやキャベツの旬が冬から春で、血中のビタミンD値が低くなりやすい時期と重なることは、偶然ではないのかもしれません。別の例を挙げるなら、植物性メラトニン含有食品で知られる、さくらんぼ。日照時間が長い初夏に旬を迎えるので、メラトニンが日光による酸化や快適な夜の眠りをサポートすることも考えられます(6)。このように、非栄養素は生理活性物質として働くため、栄養価はなくても重要な役割を持つものとして存在します。また、季節外れの果物摂取と体脂肪や肥満が関係することを調査した文献もあり(3)、旬のものを食べることの大切さが強調されています。

昔にはなかった現象として、世界中で現地には育たないものや季節外れの食材が簡単に手に入る昨今。シーズン到来とともに、野菜や果物の栄養価と抗酸化物質の値が最も高くなるため(2)、旬のものをしっかり食べて季節とからだをシンクロさせることは、健康法の基本となります。シンプルであるがゆえに忘れ去られがちですが、特に免疫力を強化したい冬の養生となるでしょう。

by ナチュロパシー・ジャパン/ゆり子

 

参照:

  1. Oda, H. (2015). ‘Chrononutrition’, J Nutr Sci Vitaminol, 61:S92-S94. doi:10.3177/jnsv61.S92
  2. Arola-Arnal A, et al. (2019). ‘Chrononutrition and Polyphenols: Roles and Diseases, Nutrients, 11(2602). doi:10.3390/nu11112602
  3. Gibert-Ramos A, Crescenti, and Josepa Salvado M. (2018). ‘Consumption of Cherry out of Season Changes White Adipose Tissue Gene Expression and Morphology to a Phenotype Prone to Fat Accumulation’, Nutrients, 10(1102). doi:10.3390/nu10081102
  4. Lee B, Yinke Yang, Zhenhua Liu Z. (2015). ‘Synergistic Mediation of Sulforaphane and Vitamin D on the Wnt-signaling Pathway’, Journal of Nature and Science, 1(2); ISSN 2377-2700
  5. Houghton C, Fassett R, and Coombes J. (2016). ‘Supforaphane and Other Nutrigenomic Nrf2 Activators: Can the Clinicial’s Expectation Be Matched by the Reality?’, Oxidative Medicine and Cellular Longevity. doi:10.1155/2016/7857186
  6. Bahare Salehi B, et al. (2019). ‘Melatonin in Medicinal and Food Plants: Occurrence, Bioavailability, and Health Potential for Humans’, Cells, 8(681). doi:10.3390/cells8070681