良いカビ、悪いカビ?

カビ(真菌類)は、生命活動に必要な代謝の際に分泌される酵素を使って腐食を促し、生態系のサイクルを助けるという役割を持っています。実は自然環境の中では、生命の尽きた動植物を地に戻すプロセスに欠かすことのできない存在なのです。真菌類は、胞子の空気中拡散と、真菌特有の菌糸と呼ばれる根のようなネットワークを張ることで、生命を維持し次世代へとつなげます。

カビと聞くとよからぬ印象を受けますが、すべてが悪いものとは限りません。酵母やきのこなどとともに真菌類に属するカビは、私たちの体内にも、定住者として各種が存在します。体内のバクテリアやウイルス同様、各種が他とうまく共存していれば、問題は起きないと理解されています(1)。その反面、真菌類にはカビ毒(マイコトキシン)と呼ばれる、毒性の強い二次代謝産物を産生する種類が各種存在し、人体にも有害であることもわかっています。体内のエコバランスが崩れると、悪玉菌 (真菌類を含む)とともに機会を狙って悪玉菌となる菌種が過剰繁殖しやすくなるため、ホスト(私たち)も体調不良となります。バランスが崩れる原因は、抗生物質の使用、食中毒、胃酸不足、砂糖や燃焼の早い炭水化物などの糖質過剰摂取、免疫機能低下、薬品類や電磁界や電磁波など。心身ともの健康はもちろん、特には腸内環境を整えることでからだ全体のバランス回復が促されます。

有効な真菌類として知られるのは、食品発酵の際に使われるサッカロマイセス種(イースト/酵母)や特定のアスペルギルス種(カビ/麹菌)などで、糖質の代謝によって活性化し発酵を進めます。ちなみに、アレルギー性の喘息は、麹菌とは別のアスペルギルス種など、空気中に漂う各種の真菌類に対するアレルギー反応も関係しています(2,3)。また、抗生物質のペニシリンは、ペニシリウムと呼ばれる種類のカビが作る代謝物の抗菌性を利用して作られたものです(4)。

屋内の有害なカビ代表は、黒カビとして知られるスタキボトリス種(4)。湿気のたまりやすい家や部屋に住んでいるなら、体調不良の原因になるので、特に注意が必要です。屋内環境に次いでは、食品業界。この場合、カビそのものよりも、毒性の強い代謝物のカビ毒による影響が懸念されています。特に、穀類を中心に各種の汚染が報告されており、それを食べる家畜(や乳製品)の汚染も問題になっています。現在のところ、国際的な基準値がないため、各地域で独自の許容値が設定されており、食品からある程度のカビ毒が検出されても、許容範囲以内であれば一般市場に出回ることになっているようです(5)。

by ナチュロパシー・ジャパン/ゆり子

 

参照:

  1. Wheeler M, et al. (2016). ‘Immunological Consequences of Intestinal Fungal Dysbiosis‘, Cell Host Microbe, 8;19(6):865-873. doi:10.1016/j.chom.2016.05.003.
  2. Woodcock, A. (2007). ‘Mouds and asthma: time for indoor climate change?’, Thorax, 62(7):745-746. doi:10.1136/thx.2007.079699
  3. Rosenblum J, et al. (2015). ‘Environmental Mold and Mycotoxin Exposures Elicit Specific Cytokine an Chemokine Responses’, Plos One, 10(5). doi:10.1371/journal.pone.0126926
  4. 4. Bennett JW and Klich M. (2003). ‘Mycotoxins’. Clinical Microbiology Reviews, 16(3):497-516. doi: 10.1128/CMR.16.3497-516.2003
  5. Foroud N, et al. (2019). ‘Trichothecenes in Cereal Grains – An Update’, Toxins, 11:634. doi:10.3390/toxins11110634