森林浴でビタミンN補給を

日本人には馴染み深い、森林浴。清々しい針葉樹の香りと、心地よく目の前に広がる緑。思い浮かべただけでも、自然のヒーリング・パワーが感じられることでしょう。

健康的なライフスタイルの提案として、林野庁が1982年に「森林浴」ということばと、そのコンセプトを紹介しました(1)。その後、日本の研究者たちが、屋久島で環境とストレスに関する調査を行い、森林浴研究の第一歩を踏みました。「Shinrin-yoku(しんりんよく)」が、初めてパブメド*に登場したのは、1998年のこと(2)。日本の調査文献各種は、国外の研究者や各種団体からの注目を集めたため、現在では日本国外でも、 森林で過ごす時間を「Shinrin-yoku 」と呼ぶようにもなっています。

* PubMed (パブメド)= アメリカ国立医学図書館の国立生物工学情報センターが運営する、医学・生物学分野の学術文献検索サービス

各種の調査では、免疫機能(ナチュラル・キラー細胞の増加と活性化)、循環機能(高血圧、冠動脈)、呼吸器系(アレルギーと呼吸器系の病気)、鬱や不安症(気分障害とストレス)、精神のリラックス(注意欠陥障害や多動性障害)などに改善が見られたと報告されています(1,3,4,5)。また、精神面での効果には、畏敬の念(感謝の気持ちや無の境地)などのスピリチュアル的要素 (6)も加わり、森林浴による効果はかなり複合的なものとなっています。大きくまとめると、精神の安定やストレス解消、心身が受けたダメージからの回復など、各種の不調に効果的ということになります(7)。

関連の調査は広範囲に渡り、例えば、森林浴の効果には、日本の森林を構成する檜や杉に含まれる成分が関係していることもわかっています(3)。また、近年注目の高まっているマイクロバイオーム(細菌)の視点から見ると、森林の土壌や空気中に漂う細菌類(落ち葉や枯れ木を腐らせて地に戻す役割を持つ真菌類や、バクテリアなど)も、欠かせない要素となります(2)。

これらの研究から、自然界のヒーリング・パワーは、生態系の絶妙なつながりによるものだということが伺えます。完璧ともいえるこのバランスは、それぞれの要素が、お互いの生命サイクルを助け合うことで成り立っています。私たちもその一部として、豊かで調和の取れた共生関係を築いていくことが理想的だといえるでしょう。

自然との接触に欠けがちな、現代人のライフスタイル。私たちの業界では、自然に浸って過ごす時間を「ビタミンN」と呼び、ビタミンN処方を健康プランに取り入れるプラクティショナーが、ここ数年増加中です。ちなみにこの「N(エヌ)」は「Nature(ネイチャー=自然)」の頭文字。この動きの影響で、一般向けの雑誌やメディアでも、森林浴についての記事が取り上げられるようになりました。ヨーロッパでは「Shinrin-yoku」または「Forest Bathing(フォレスト・ベイジング)」という名の下に、各言語で書籍が出版されているほか、お勧めの場所なども紹介されています。森林浴を楽しむと同時に、健康促進できるのは素晴らしいことです。もし、自然から遠く離れて暮らしているなら、次の週末はお気に入りの森探しに出かけて、ビタミンNをたっぷりと補給しましょう。

by ナチュロパシー・ジャパン/ゆり子

 

参照:

  1. Tsunetsugu Y, Park BJ, Miyazaki Y. (2010). ‘Trends in research related to ‘‘Shinrin-yoku’’ (taking in the forest atmosphere or forest bathing) in Japan’, Environ Health Prev Med. 15:27–37. doi: 10.1007/s12199-009-0091-z
  2. Craig JM, Logan AC, and Prescott SL. (2016). ‘Natural environments, nature relatedness and the ecological theater: connecting satellites and sequencing to shinrin-yoku. Review’, Journal of Physiological Anthropology. 35:1. doi: 10.1186/s40101-016-0083-9
  3. Li, Q. (2010). ‘Effect of forest bathing trips on human immune function’, Environ Health Prev Med. 15:9-17. doi: 10.1007/s12199-008-0068-3
  4. Chorong Song, C. (2015). ‘Effect of Forest Walking on Autonomic Nervous System Activity in Middle-Aged Hypertensive Individuals: A Pilot Study’, International Journal of Environmental Research and Public Health. 12. 2687-2699. doi: 10.3390/ijerph120302687
  5. Park BJ, et al. (2007). ‘Physiological Effects of Shinrin-yoku (Taking in the Atmosphere of the Forest)—Using Salivary Cortisol and Cerebral Activity as Indicators—’, Journal of Physiological Anthropology. 26(2):123–128. doi: 10.2114/jpa2.26.123
  6. Hansen M, Jones R and Tocchini K. (2017). ‘Shinrin-Yoku (Forest Bathing) and Nature Therapy: A State-of-the-Art Review’, International Journal of Environmental research and Public Health, 14:851. doi:10.3390/ijerph14080851
  7. Wen Y, Yan Q, Gu X and Liu Y. (2019). ‘Medical empirical research on forest bathing (Shinrin-Yoku): a systematic review’, Environmental Health and Preventive Medicine, 24:70. doi:10.1186/s12199-019-0822-8