睡眠と体内時計

心身ともに深く休まる睡眠は、元気に翌朝を迎えるために欠かせないもの。体内時計によるホルモンの調節で睡眠が促され、深い眠りについているあいだに、からだは各機能のメンテナンスと同時に細胞の修理や再生を行います。そのため、寝不足や浅い眠りが続くと、健康のバランスが崩れやすくなります。

睡眠と光の量

最良とされる睡眠時間は個人によって多少異なりますが、基本的に夜から朝までの7〜8時間くらいとされています(1)。エジソンが1879年に電球を発明して以来、テクノロジーの進化とともに、私たちのタイム・テーブルは24時間型ライフスタイルへと移行してきました。これは、いうまでもなく、人類の歴史上かなり新しいこと。電気や電球が普及するまで、先人は日没後に松明や蝋燭の光などに頼ったのでしょうが、現在私たちがさらされている人工的な光の量とは比べ物になりません。主には太陽の光が体内時計とシンクロして、時間帯に合わせたホルモンのバランスがコントロールされため、体内時計に合わせたリズムで生活するのが理想的といえます。とはいっても、日没とともに就寝準備にかかるのは、多くの人にとって非現実的なことなので、就寝2時間前までにブルー・ライトを発するモニター(テレビ、コンピュータ、タブレット、携帯電話など)の使用をやめ、遅い時間には照明を落とし光の量を調節するなど、できる範囲での対策をお勧めします。

体内時計と自然のリズム

意識することなく常に機能している体内時計は、太陽の動きや季節など、自然のサイクルとシンクロしています。体外の環境状態に合わせて、各種機能を司るホルモン等が調節されているということです。例えば、夜遅くなっても明るめの照明を使い、就寝直前までタブレットや携帯の画面を見ていると、視覚神経を通して脳が刺激されて、睡眠に必要なメラトニンの合成が妨げられます。その結果、理想的な眠りは得られなくなります。これは、人工的な光(特に、ブルー・ライト)が、脳を刺激してコーチソルという副腎皮質ホルモンを分泌するため。コーチソルは、メラトニンとは相反する関係にあるので、コーチソルが分泌されると、メラトニンは制御されます。

睡眠が適当でなくなると…

当然ながら、健康の維持が困難になります。脳機能や免疫機能が低下(2,3)するだけでなく、ホルモンのバランスも崩れるため(4)、その影響はからだ全体に及びます。睡眠不足での運転は飲酒運転と同レベルで危険というデータも出ています(5)。疲れが抜けず体調が優れない時や、横になりたいと思う時は、からだが黄色信号のサインを出しているので、無視せずにしっかり休むようにしましょう。

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かつて、体内時計は特殊な脳神経細胞のみ存在すると考えられていましたが、近年になって、肝臓や心臓など、脳以外の組織にも体内時計が備わり、脳の指令から独立して機能することもわかっています(6)。つい数年前には、新たに脳のリンパ経路なるグリンパティック・システム(睡眠中に脳のデトックスを行う)が発見され(7)、医学の分野に新たな1ページを加えました。眠りに関する機能やメカニズムは、まだ全貌が明らかではないため、今後も新たな発見が続きそうです。

 

参照:

  1. Artis L (2013). “First Ever Great British Bedtime Report Launched”. Available at: http://www.sleepcouncil.org.uk/2013/03/first-ever-great-british-bedtime-report-launched/ (Accessed: 07/05/2015)
  2. McCoy J, Strecker R. (2011). The cognitive cost of sleep lost. Neurobiol Learn Mem. 96(4), pp.564–582. doi:10.1016/j.nlm.2011.07.004.
  3. University of California, San Francisco (2015), “Short Sleepers Are Four Times More Likely to Catch a Cold”. Available at: http://www.newswise.com/articles/view/639144? (Accessed: 03/12/2015)
  4. Simon SL, et al. (2015). Sweet/Dessert Food Are More Appealing to Adolescents after Sleep Restriction. PLoS ONE. 10(2): e0115434. doi: 10.1371/journal.pone.0115434
  5. Williamson AM, Feyer A (2000). Moderate sleep deprivation produces impairments in cognitive and motor performance equivalent to legally prescribed levels of alcohol intoxication. Occup Environ Med. no.57 pp.649–655
  6. Morris C, Aeschbach D, Scheer F. (2012). Circadian System, Sleep and Endocrinology. Mol Cell Endocrinol. 5; 349(1) pp.91–104. doi:10.1016/j.mce.2011.09.003.
  7. Lee H, et al. (2015). The Effect of Body Posture on Brain Glymphatic Transport. The Journal of Neuroscience, 35(31) pp.11034-11044; doi: 10.1523/JUEUROSCI.1625-15.2015